2006年5月25日〜28日
ナポリの超満員
―『平和の証』海外へ―
ぼくが毎年、新西宮ヨットハーバーで実施している、クレーン・パフォーマンス
『平和の証』は海外では定評がある。
これは広島に投下された原爆の製造者の原子物理学者バーンポーターが、ある日僕のアトリエを訪ねてきたのがきっかけで、100年計画で制作し続けている作品であるが、この度ナポリのドン・ペッペモッラの知るところとなり、企画招待される事となった。
‥ドンの適当な日本語が見当たらないが『清水の次郎長』のような人と言えばいいか。
とにかく彼の企画によって、ナポリ美術大学での僕の講演は、超満員。
美術館では僕の数百号の作品約十点を始めとする数十点の絵が陳列された天井の高い六つの大広間も、超満員。
そしてナポリ市の中心にあるダンテ広場で実施されたクレーン・パフォーマンスでは約千五百人の観衆で、超満員。
パフォーマンス終了後もなかなか観客は立ち去らず「シーマモト、シーマモト」を連呼してくれた。
まだある。
パフォーマンスの翌日には、ナポリ湾が見渡せる小高い丘陵地で、広さは甲子園球場ほどある彼の屋敷でパーティーを開いてくれたのだが、そこも、超満員。
これは何だろう。
ナポリの人達は生活の中にアートが溶け込んでいる。
例えば日本人にアートの説明をしようとすると「そんな難しい世界は分からない」と
逃げる人が多い。アートというものは、美術館を始終見学して美術史等を学んでこそ分かるのだと思っているのだ。
しかしナポリの人はアートを勉強するものとは考えていない。至る所に素晴らしい建
物があり、あたかも公園に遊びにいくかの如く美術館へも気軽に通り抜ける。
日本人はお洒落といえば、高級な衣服を身に纏い、ブランドのバッグを持ち歩くように考えている人が多いが、ナポリの人の多くは決して豊かではないが、まるで三度の食事のようにアートが日常として身に染み渡っているようである。
嶋本 昭三
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